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(西暦は引用者)

戸籍訂正申立却下審判に対する即時抗告申立事件

名古屋高等裁判所決定昭和54(1979)年11月8日(昭和54(1979)(ラ)208号 戸籍訂正申立却下審判に対する即時抗告申立事件)

家庭裁判月報33巻9号61頁

法律時報55巻1号202頁,石原明・大島俊之編著『性同一性障害と法律183頁(晃洋書房,2001年)

→ 一審 名古屋家庭裁判所審判昭和54(1979)年9月27日

last edited 2001/04/29


裁判事項

 男女の性別を決定する基準

 

裁判要旨

 男性から女性への性転換手術により,外形的性格的に女性化したとしても,人間の性別は,性染色体の如何によって決定されるべきものであるから,鑑定の結果正常男性型の性染色体をもつ者については男性から女性へ戸籍訂正することはできない。

〔参照条文〕 戸籍法113条

〔抗告人〕 (略)

〔事件本人〕 (略)

 

主文

 本件抗告を棄却する。

 

理由

 抗告の趣旨と理由は,別紙即時抗告申立書(写)に記載されているとおりである。

 

要旨

 そこで審案するに,人間の性別は,性染色体によって決定されるべきものであるところ,記録中の鑑定人○○○○作成の鑑定書によれば,事件本人○○○○の性染色体は正常男性型であるというのであるから,同本人を女と認める余地は全くない。抗告人の戸籍訂正申立を却下した原審判は,もとより正当である。
 よって,本件抗告を棄却することとし,主文のとおり決定する。

 

抗告の趣旨

 原審判を取消し,事件を名古屋家庭裁判所に差戻すとの裁判を求める。

 

抗告の理由

一  原審判理由中判示によれば,事件本人○○○○は本来正常な男性であって,外見上女性型を示しているに過ぎない旨判示し,事件本人は依然男と認めるほかない旨認定している。

二  しかしながら,事件本人は性転換手術により男性部分を喪失し,造膣手術により女性への転換を果たしたのであって,上記手術により事件本人の睾丸は剔出され,その結果精子増殖機能は喪失し,外形的はもとより,内面的・機能的にも女性化しているのであって,原審認定の如き,依然男性であるとは到底謂い得ない。

三  性転換術により女性化した場合,戸籍訂正が可能であるところ,該「性転換」とは現代医学上可能な範囲の手術によりなされた性転換を謂うのであって,性染色体そのものを女性のそれに転換し,或いは人工子宮を造型し,月経を誘致し,もって受胎可能な程度に迄性転換を望むことは,現代医学上不可能なことであって,性転換の程度につき上記の如き完全な女性化を求めることは不可能を強いるものと謂わざるを得ない。

四  事件本人の場合,現代医学において為され得る可能な限りの性転換手術を受けたのであって,これをもって性転換手術により女性化したものとみるべきが相当であって,当然戸籍訂正の対象となるとすべきである。
 如上の見地から,事件本人は「正常な男性である」との原審判の認定は事実誤認と謂うべく,取消しを免れない。

五  これを要するに,事件本人は現代医学において可能な限りの手術に因り性転換を遂げたのであって,これ以上の性転換手術は望み得ず,事実事件本人は男性としての外型的特徴のみならず,生理的特徴も喪失しており,それに伴い性格的にも女性化しているのであって,理想的な性転換を遂げたものと謂うべきであり,事件本人が依然男性であるとする原審認定が誤りであること明らかである。

六  尚,申立人の抗告理由の詳細については,追って提出する抗告理由補充書において主張する。


原審判(名古屋家庭裁判所)要旨

申立却下。

 鑑定人○○○○の鑑定結果によれば、Aは染色体検査、骨盤エックス線検査、診断所見によっても本来正常な男性であって、造腔術等の一連の性転換術や豊胸術によって外見上女性型を示しているにすぎない。よってAは依然男と認めるほかなく、本件申立は前提を欠くことになり、爾余の判断をするまでもない。

事実

 本件の事件本人Aは、X(申立人、抗告人)およびその妻Bとの間に、二男として生れた。ところが、「Aは出生時男と診断されたので上記の如く届出したものであるが、元々いわゆる半陰陽で、長ずるに従い女性の特徴が顕著となり、この際転換手術をうけて外形的にも女性となった」として、Xが、「Aと父母との続柄がニ男とあるのを長女に……訂正することを許可する」との審判を求めた。(赤字はママ)


参考条文

戸籍法第113条
戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。


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